お尻の悩みは非常にデリケートで、誰にも相談できずに一人で抱え込んでしまう患者さんが少なくありません。特に「お尻に何かデッパリがある」「お通じの後に戻そうとしても戻らない」といった症状で受診される方は多く、その多くが「スキンタグ(肛門皮垂:こうもんひすい)」と診断されます。
スキンタグ(肛門皮垂)の正体とは?
スキンタグとは、一言でいえば「お尻の皮膚のたるみ」です。便秘によるいきみの繰り返しや、出産などをきっかけにお尻の周囲の皮膚が余分に伸びてしまい、それが「出っぱり」のようになった状態を指します。
よく「これって痔ですか?」と聞かれますが、お尻の外側にできた出っぱりという意味では「外痔核(がいじかく)」に近いものですが、あくまで皮膚のたるみであるため、以下の特徴があります。
・お尻の中には戻らない(内痔核ではないため)
・痛みや出血の原因にはならない
・放っておいても悪化して病気になるものではない
特に若い女性や、産後の女性に多く見られる症状の一つです。
スキンタグができる「3つの主な原因」
強いいきみの繰り返し強いいきみの繰り返し
便秘などで日常的に強くお腹に力を入れたり、出産時のいきみによって皮膚が引き延ばされたりすることで発生します。
痔が治った後の「なごり」痔が治った後の「なごり」
血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)などで一度大きく腫れた後、腫れが引いた際に伸びた皮膚だけが残ってしまうケースです。
切れ痔の慢性化
切れ痔(裂肛)を繰り返すと、その周辺の皮膚が炎症を起こして硬くなり、「見張りいぼ」と呼ばれるスキンタグを形成することがあります。
「お薬」でスキンタグは消えるのか?
スキンタグは皮膚の「たるみ」そのものであるため、お薬を塗っても消えることはありません。
痔の薬(注入軟膏や塗り薬)は、炎症を抑えたり、腫れを引かせたりするためのものです。スキンタグは炎症ではなく「余った皮膚」なので、物理的に取り除かない限り、その形がなくなることはありません。
そのため、治療の基本は「経過観察」となりますが、生活の質(QOL)に影響が出ている場合は切除を検討します。
切除を検討するべき「2つの基準」
「痔ではないから放っておいて大丈夫」と言われても、ご本人にとっては大きな悩みであることもあります。当院では、主に以下の2つの場合に日帰りでの切除手術を行っています。
衛生面やかゆみの問題
スキンタグがあることで排便後の拭き残しが生じやすくなり、それが原因で炎症を起こしたり、かゆみ(肛門掻痒症)を引き起こしたりしている場合。
外見的な悩み
「見た目がどうしても気になってストレスを感じる」「清潔に保ちたい」という心理的な負担が大きい場合。
手術を受ける前に知っておいてほしいこと
スキンタグを切除すれば、すべてが「つるん」とした状態になるわけではありません。
お尻はもともと排便のために伸縮が必要な場所であり、しわが多い部位です。手術で切除しても、キズが治っていく過程で多少の段差や新たなしわができることがあります。赤ちゃんのような「つぼみのようなお尻」を完璧に再現するのは難しいという現実もありますが、現在の出っぱりによる不快感を大きく軽減することは可能です。
お尻は自分では確認しづらく、非常に繊細な場所です。他の病院で「痔ではないから気にしなくていい」「手術するほどではない」と言われ、それでも納得がいかずに当院へ相談に来られる患者さんもたくさんいらっしゃいます。
スキンタグによって炎症が起きたり、精神的なストレスを感じたりしているのであれば、それは立派な「治療の対象」です。まずは大腸肛門の専門医に相談し、ご自身の状態を正しく把握することから始めましょう。

